ただの事業担当者から見た世界

某私立大学理工学部→生体工学研究室→通信系研究所→通信インフラ会社(←いまここ)思ったことを徒然に書いていこう。

発電・送電事業の分離(2)

前回は発送電事業の分離について「概要」を説明しました.
今回は「一般的にあるメリットの妥当性」についてです.
では前回のおさらいで「一般的な主張にあるメリットです」

【メリット】
・自由競争による電気料金の値下げ(日本の電気料金は世界一高い)
再生可能エネルギーの普及促進
・発電地域へ正統な対価が支払われる(地域型発電会社)
・参入障壁の低下(発電事業は参入障壁が低い)
・電力会社と政治との癒着の防止(電力会社が巨大な力を持たない)

他にも「メリット」ありそうですが
これを一つ一つ今回・次回で考えてみましょう.

【自由競争による電気料金の値下げ(日本の電気料金は世界一高い)】
まず,最初に「日本の電気料金は世界一高い」 の主張は間違っていると断言しましょう.
資源エネルギー庁の「資源エネルギー白書」です.

これ見てわかるように
日本は決して電気代が高いわけではないです.
では,「自由競争による電気料金の値下げ」
です.

どうして自由競争になると値段がさがるのか・・・
子供向けですがこのサイトはなかなか分かりやすいです.(まな@ぼう)
つまり,発電会社が価格競争を行って値段が下がる.
つまるところの「市場原理」ですね.

これが果たして「発電事業」にあてはまるか
発送電を行った国はいくつかありますが,そのモデルケースを考えてみます.

イギリスの発送電分離
英国では,サッチャー政権下で,徹底した電力自由化が,いちはやく実施された.
イングランドウェールズてでは,国有電力会社が1990 年に,発電会社 3 社と送電会社 1 社に分割・ 民営化(所有分離)され,発電市場かが自由化された.
小売市場では,独占的に電力供給してきた国有の12の配電局かが民営化され,新規参入が認められるようになった.
1999年までに,全ての需要家が供給事業者を選択できるようになった.しかし制度上一部の発電事業者が市場支配力を行使できるなど,欠陥が存在していたため電気料金が下げ止まり値上げを始めた,そこで2001年に新制度がスタートした.
しかしながら状況は芳しくなく2005年には,発電設備の効率的利用を促して、英国全域での料金引き下げを図るため、供給余力の あるスコットランド市場と、需給が逼迫するイングランドウェールズ市場が統合された.

ドイツの電力自由化
ドイツでは,1998年に電力市場が全面自由化されました.導入直後は1~2割の料金値下げされドイツの電力自由化は, 諸外国から成功例として取り上げられた.
しかし,2000年ごろから電力会社間の合併により電力市場の寡占化がおこり,料金は徐々に上昇し始めました.現在は新エネルギーの導入など高コスト発電の導入などにより先進国中では比較的高い電力料金となってます.

アメリカの電力危機
アメリカでは1978年から段階的に電力市場の開放が行われ,1990年代には完全な電力市場の開放が行われました.
しかしながら,この市場は電力を如何に「高く売るか」に焦点が置かれており(当然だが).電力は高騰し行政が規制をかけることにした.
すると小さい電力会社は財政危機に陥って,電力市場で調達できない場合は停電が起こることも度々あった.当時カルフォルニアではシリコンバレーを中心情報産業で好景気であり電力需要は勢い良く伸びて行った.そこで電力供給が逼迫してきたため再び規制緩和をした結果さらに電力料金が上がりカルフォルニアでは家賃より電力料金の方が高いという事態が度々起きることになる.
電力は卸売市場からそのまま利用者の電力使用料に反映できたため,電気会社はあえて電力を逼迫させていた面があった(エンロンなど).
このような事からカルフォルニアは大きな電力危機に陥ったのである.

これらの結果は発送電の分離と電力自由化から(特に市場原理に頼っている)導かれたのは
「自由化すると電気料金が下がる」
という議論は正しくはないと思われます.

【まとめ】
・日本は元々電力料金が高いとはいえない
・市場原理を取り入れる事により電力料金が下がるというというのは幻想であり,制度設計によっては電力供給の不安定化や電気料金の高騰をまねく